五反田(差)篇

前置きをすっ飛ばす

日記ではちょこちょこと触れていたが、2010年9月12日に国家資格の試験を受けた。4月に会社から試験を受けるべく打診されて承諾し、試験の実施日が9月上旬から中旬と知ったときに、ある考えが浮かんだ。

試験の結果がどうあれ、自分自身にご褒美をあげよう。

試験の翌週あたりが、ちょうど毎年東京にいくタイミングだ。それは、いいわけといってもいいし、きっかけといってもいい。なにせこのコーナーの“最新ファイル”を参照するに、僕は2003年の3月以来、7年も(!)、“そういう行為”をしていないのだった。いま見直して気づいたのだが。

プライヴェイトでそういう機会がまるっきりなかったというのも悲しいはなしだが、まだ自分が大丈夫なのか、そろそろ久しぶりに試してみないとやばいんじゃないのか、と、ちょうど思いはじめた時期だった。

幸い、試験の合格発表は11月5日だが、試験日の翌日に自己採点してみたら受験番号やマークシートの記入ミスがない限り、間違いなく合格できるレヴェルだった。これはやはり自分にご褒美をあげなくては。それはある意味、“腹をくくる”ことでもあった。

このコーナーのファイルを全部読んでくれたかたなら、そういうお店にいくことが実はものすごくエナジィを使うことだということを理解してくれていると思う。まして、現在僕は大分県民だ。

まず、最後に訪れてから7年以上経っているのだから、渋谷のあのお店は存在しているかどうかさえわからない。とすれば、新規開拓しかない。それも大分県民が東京のお店をだ。まさか東京時代の会社の同僚にいい店を紹介しろと頼むわけにもゆかない。

つまり、“そういう行為”をするために開拓や冒険をするくらいなら、ホテルで酒を飲んでえっちなヴィデオでも観ているほうがよっぽどラクだったりする。でも、ここは腹をくくるべき時期だろう。

日記で書いたが、ホテルはいろいろな事情を考慮して五反田にした。であれば、まずい店にひっかかって身ぐるみ剥がれても、服と靴さえ返してもらえれば歩いて帰れる五反田のお店がいい。

そこで、googleで「風俗情報」で検索して、出てきたサイトに眼を通す。基準は、まず五反田に本拠を置いているお店。検索順位みっつめまでのサイトすべてに紹介されていて、自前のサイトでシステムや料金体系がきちんと示されているお店。

というわけで、Kという店にすることにした。もうひとつの決め手は、Kが「ホテヘル」、つまりラヴホテルを使って営業しているスタイルということだった。実は僕は、生まれてから一度もラヴホテルというものを利用したことがないので、どんな場所なのか興味があった。

さて。五反田のホテルでシャワーを浴び、外出。しかしやはり勇気が出ず、無意味に五反田駅の周りを一周したり、川を見にいったりしてしまう。とりあえず勇気を振り絞って駅からKに携帯で電話を入れる。

Kのサイトには店の地図が掲載されてあったが、ふーぞく店がそんなおおっぴらに店の情報を掲示していいのか、と半信半疑だったので場所を確認するためと、新規来店だということをアピールしたかったのと、電話を入れることで再度腹をくくる意味があった。

途中、ガイジンのわりと若くて綺麗な女性から「オニイサン、イイコイルヨ。遊ンデイカナイカ」と声をかけられたが当然無視。ちょっと迷ったが、無事店に辿り着く。・・・驚いた。サイトで掲載されていた地図の通りの場所にあったからだ。

まずいったん受付で新規であることを確認され、どこのウェブサイトで知ったかという質問をされ、待合室に通される。・・・照明がものすごく明るい。さらに店員(男性)さんがみんな明るい。なにせ女の子を決めて出てゆくお客さんに、

「いってらっしゃいませ〜!!」

と、全員が大声をかける。なんというか、いままで経験してきたお店ではもうちょっとこう、なんというか、淫靡なふいんき(なぜか変換できない)が漂っていたのだが、まるで学生街にあるチェインの居酒屋みたいに、そんなムードはかけらもない。

待合室にいる間に店の説明をされる。Kはふーぞくグループの傘下のひとつで、主に若い女の子を売りにしている。他に人妻専門店のFと少し高級なヘルスOを経営していて、デリヴァリィもできるとのこと。

少し待って、受付に呼ばれ、女の子の写真を見せられる。10人以上いる。さすがに若い女の子が多いが、僕はあまり背が高くないので(というかちっちゃい女の子が好き)、165cm以上の女の子はパス。

さらに、胸の大きい娘はあまり好きではないので、バスト88cm以上の女の子もパス。すると自動的に選択肢は半分以下くらいになる。

そして最初に選んだ女の子は、なんと三時間待ち(!)。次に選んだ子は一時間待ち。次に選んだ子は30分待ちだったが、僕が90分のコースを希望したら、それだと女の子の勤務時間を超えてしまうので駄目だといわれた。

そこで店員さんが「あの、もしなんだったらOのほうの女の子も見てみますか?」と写真を出してきた。「このふたりならすぐお入りになれますよ」と示されたうち、ひとりの女の子、Kちゃんが気に入ったので、お願いする。

さて、Kだと90分コースは24Kなのだが、Oだと95分コースが31K。その違いはなんなんだろうと思いつつお金を払い、今度はラヴホテルの説明を受け、どこにしますかと訊かれる。一番安いのは2.5Kで、高いのは4Kだそうだ。

「えーと、やっぱり料金が高いと部屋が広くて綺麗なんですよね」
「まあ、一般的にはそうでしょうね」
「そうすると、安いと狭いとか古いとかになるんですよね」

「まあ、やるこた一緒ですから」

僕はこのときの店員さんの台詞と口調を思い出すたびに笑ってしまう。この明るさはなんだ。まあ、そのときは緊張していたせいもあって笑うどころではなかったのだが。

結局、一番高い4Kのラヴホテルを選び(たった1.5Kの違いだったら広くて綺麗な部屋のほうがいい。少なくとも僕はそう考える人間だ)、紙切れを二枚渡されて、僕は店員さんの「いってらっしゃいませ〜!!」の声を背中に受けて店を出た。

またちょっと道に迷ったが、指定されたラヴホテルに着き、受付で紙切れを渡した。オバさんに「これじゃないよ」といわれて慌ててもう一枚のほうを渡す。「4,000円ね」といわれて一万円札を出し、お釣りと一緒にルームキィを受け取った。

4階の部屋まではエレヴェイタではなく階段で上がった。なるほど、階段を利用するひとは滅多にいないのだろう。踊り場にタオルやシーツが積まれている。なんだっけこれ。建築法違反? もっとも、階段を利用するのに邪魔になるほどではなかった。

部屋を開けてみて驚いた。僕が泊まっているシティホテルより広い(本当)。しかも風呂とトイレが別で、洗面所が独立している。僕が泊まっているホテルはユニットバスで、トイレと風呂と洗面所がワンセットだ。

そしてベッドは(当然だが)ダブルサイズで、TVは大画面液晶。ベッドとTVの間には安物だが応接セットがあって、灰皿が置かれている。もしかすると一泊の料金は僕が泊まっているホテルより高いのではないかと、ちょっと悲しい気分になった。

さて、ふーぞくの「すぐお入りになれます」の感覚を忘れていたので、とりあえずエアコンを入れて、店に電話して入室した旨を伝え、部屋の温度が下がるまで煙草を吸う。あ、やばいトイレもいっとかなきゃ。で、煙草を吸い終えたが、チャイムが鳴る気配はない。

まあいいや、とハンガーにかけたジャケットから文庫本を出し、読みはじめた。次第に文庫本の内容に没頭しはじめた頃、唐突にチャイムが鳴った。僕は文庫本を閉じてテーブルの上に置き、ドアに向かった。

TO BE CONTINUED・・・


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サイトでは「ホテル代2Kは当店負担」と書かれています。ホテル代の残りはお客の負担となるので、この場合ホテル代の総額は6Kですね。もっとも、お店で使うことでもう少し割引になっている感じがします。