住所の不満
まず、自宅から徒歩でも自転車でもバスでも電車でも通える学校というのは、どういう位置関係なのだろう。
考えられるのは直線距離なら1kmそこそこなのだが、バスだと路線が迂回してしまうから2Kmほどの道のりになる、というところだろう。じゃあ電車は? 線路というのは基本的に直線ではないか。
で、こういうモデルを考えてみた(バスの路線は四角の道路を循環していると仮定する)。

これで自宅がA駅から徒歩3分、学校がB駅から徒歩10分、電車に乗っている時間が3分なら、電車での所要時間はドアトゥドアで16分となる。
バスの場合、路線をそのまま歩けば27分。乗っている時間が歩きの三分の一だとすれば9分。自宅と学校が最寄の停留所から各々徒歩30秒だとすると、バスでの所要時間はドアトゥドアで10分。
また、徒歩だと斜めの道路を突っ切ることになる。(12*12+15*15)の平方根なので、約20分。これなら、まあ、歩けない距離ではない。
しかし、これだと自転車の所要時間は(歩きの二分の一だとして)10分。バスと変わらない。また、電車を使うメリットがなくなる。時間が正確で本数が多いことくらいだろう。
だが、それなら遅刻しそうなときは丘野陽子ばりに自転車をかっ飛ばすのが、筋というか人情というものではないだろうか。
そもそも主人公(妹の君子も含めて)は定期券をもっていないらしい。いつ使うかわからない電車のためにバスの定期券を購入しないというのは、納得いかない。
団地住まいの両親にそれほど金があるとも思えない。というか、自転車で10分なら、初手からバスは雨が降ったときの手段くらいに考えて回数券だけは購入している、と考えたほうがいいのではないか。
結局のところ、「電車でもバスでも徒歩でも自転車でも通える位置関係」というのはご都合主義の権化なのである。文句があるなら位置関係の設定を公開してほしいと思う。
実のところ、なんでこういうくだらないことに拘るかというと、前作のように主人公の通学手段を決めないほうが、逆にリアリティがあるからだ。別にわざわざ朝会わなくたっていいじゃないかと思うのである。
もしくは『ときめきメモリアル』や『To Heart』のように、女の子全員を強引に徒歩通学(クルマも数名いるが)にしてしまうほうがいい。なんか高校生のくせに無駄な交通費を小遣いから捻出しているようで、『TLS2』の設定は好きではない。
服装の不満
二学期のキャラは、登下校時(屋外)ではコートを着ている。吐く息も白い。芸コマだ。だが、三学期のキャラはコートを着ていない。息も透明だ。
これはどう考えてもおかしい。二学期は11月からはじまっている。11月下旬であれば、暖かい日であればコートを着る必要はなかろう。また、三学期は2月からはじまる。下旬とはいえ2月はまだまだ寒い。なのに誰もコートを着ていない。なぜだ。
青葉台高校には「コートの着用は11月24日から2月21日まで」という校則でもあるのか。ついでにいえば、なぜ11月下旬に吐く息は白く、2月下旬は透明なのか。
前作は「システム」で触れたように、春夏秋冬である。「冬」に登場するキャラがコートを着用し、その吐く息が白いのになにも不自然はない。『TLS2』は「トゥルー」を標榜しながら、こんな間の抜けた設定をしているのだ。
送別会の不満
前作のエンディングでは「女の子のいちばん好きな場所」がキィになっていた。キィであると同時に切なさ爆発だった。今回はそれがない。代わりに木地本主催(?)の送別会がある。
どうして「好きな場所」ではいけなかったのだろうか? 「女の子の一番好きな場所を教えてもらえないなら、つきあう資格はない」。この設定、すごく好きだったのだが。
『TLS2』では、「送別会」のおかげで告白相手を二度設定する必要が生じた(間違ってボタンを押すとアウト)し、無駄な時間を費やすことになってしまう。
だいたいなんでただの一生徒である主人公と君子のために、あんな大規模な送別会が開かれるのか。あのいかにも「青春ドラマ」的なクサ過ぎるノリも含めて、あの展開には絶対に納得いかない。
そもそも三学期では、ある条件を満たすと送別会の主役である筈の主人公と君子が同時に(それもかなり長い時間)席を外してしまうという、これまたパラドックスな結果を生んでしまっている。
シナリオライターはいったいなにを考えていたのだろう。前作のいい点は素直に継承するべきではなかったのだろうか。『TLS』はもともとクサいゲームだから、ここでクサさが鼻につくほどになってしまうのである。
設定の総評
キャラでもそうなのだが、結局“トゥルー”で首を絞めている。現実的にしようしようとするあまりに、却って現実から遠ざかっていく悲劇、もしくは喜劇。
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