原題は、『Take me out to the ball
game』。 大リーグの試合では、ホームチームの7回の攻撃時に必ずこのうたが流れるそうです。 大学時代、英語の授業で毎回(半年間)うたわされてました。


 ヤクルト−巨人22回戦を、神宮球場に観にいった。 僕はなんと生まれてはじめての、ナマでのプロ野球公式戦観戦だ。 しかしメンバーが会社のヤローども四人だったというのが、ちょっと悲しい(T-T)。

 四人とも巨人ファンなのに、どういうわけか席は一塁側(つまりヤクルトサイド)。 「これじゃ大声で松井の応援なんかできないなあ」とみんなでぼやく。 しかし一塁ベース後方、プルペンの真上で前から10列めと、なかなかいい位置だ。

 席に着いたのは、二回裏のヤクルトの攻撃中(つまり巨人の守り)。 ナマで観る薄暮のカクテル光線がむちゃくちゃ綺麗なのに、まず驚く。 そしてグラウンドに眼をやると、

「おおっ、あんな近くに高橋がっ!」
「わっわっ石投げれば俺でも届くくらいの場所に清原がっ!」

 てな感じで、まるっきりミーハー(死語?)状態になる。 で、こりゃあ飲まなきゃ損々、とばかりに売り子さんがくるたんびに呼び止めて、生ビールをつまみもなしに飲みまくる(最終的にぜんぶで五杯飲んだ。僕ひとりでだよ)。

 さて、最初の興奮状態から醒めると、いろんなことに気付く。 まず、野球場というのは思ったよりも狭いと感じた。 神宮が例外的なのかもしれないが。

「あ、ファウルボールが飛んでくるぞ危ない!」
 とか思って身を竦めると、高橋クンがなんてことないよこんなの、とばかりに楽々“フェアグラウンドで”捕球するのだった。

 次に、僕らが座っていたのは一塁側、つまり基本的にヤクルトの応援席のはずだったのに、どういうわけか巨人にヒットが出たりヤクルトのチャンスが潰れるたびに、拍手がぱらぱらと起こる。 どうも巨人ファンというのは、場所を選ばないようだ(ひとのこといえるのかお前)。

 で、野球を観てるよりも周りの反応を聞いてるほうが面白かったりする。 僕の席は特に恵まれていたのか、周囲は面白いひとばかりだった。

 まず、僕の右側に座っていた四人組、若いアヴェックと老人夫婦。 どうも奥さんの親御さんを野球観戦に連れてきたムコどの、という構図らしい。 このムコどのが、異様にうるさい。

「誰それは昨日投げてますからリリーフはないでしょう云々」
「ここでランナーを送れれば次は代打の誰それが云々」
「守備固めで誰それを出せばバッティングが云々」

 どうやら野球に詳しくないお嫁さんと義理の親御さんに説明しているようなのだが、それを球場の大歓声のなか、5m四方に届くような大声でやってくれるからたまらない。 ありがたいことに、彼らは六回裏のヤクルトの攻撃が終わると、席を立ってくれた(なにしにきたんだ?)。

 で、彼らがいなくなったので、その右側に座っていたおぢさんふたり組がこっちにズレてきた。 そのおぢさんのひとり、いきなり僕に、
うなぎ弁当食べない? 余っちゃったんだけど」
 まあ、たしかにその日は土用丑の日だったけどさ・・・。

 次に、僕らの後ろの席に座っていた若いアヴェック。 女の子は巨人ファンだったが、なぜか男のほうは阪神ファン(それも熱狂的な)のようだった。 で、アナウンスの「一番、センター」に合わせて、
「センター、新庄

 とか、稲葉(ヤクルトの選手)に向けて、
「かっとばせー、桧山あー!」

 とか、ライン際のライトライナーを高橋クンが好捕してランナーを釘付けにすると、
「いまの、亀山やったら勢い余ってボールより向こうっ側までいってもうて、捕れんやったろうなあ」
とかゆってる。

 女の子はしょうがないなあという感じで聞いていたが、僕はこういう“おばかさん”は許せる。 もっとも、じゃあヤクルト−巨人戦なんて観にくるなよ、とは思ったが。

 そして僕のまん前の席に座っていた、やはり若いアヴェック。 これが、男がヤクルトファンで女の子が巨人ファン。 女の子がちょっと好みの顔だちだったので注目していたのだが(するな;)、

「あ、清水が出たこれで松井がホームラン打って2点、いえ〜!」
「ぶあーか、松井なんて屑だよ屑ゲッツーだよエイカー」
「おーっしゃいけ廣田この回抑えてサヨナラだ」
「なにいってんのよこれでホームラン出て槇原っち出て終わり〜っ!」

 うーんどうも伝わらないなあ。 とにかく始終漫才やってるみたい。 彼らのやりとりに思わず笑ってしまったことも、二度や三度じゃなかった。

 さて、試合のほうはヤクルトのエイカーと巨人の入来の力投で双方無得点のまま、延長戦へ。 延長十回表、巨人は一死満塁のチャンスで、代打に石井。 ここでさっきの巨人ファンの女の子に、再度ご登場願おう。

「いけー、打て石井ぃ〜っ。岡村孝子ちゃんも応援してるぞお〜!」

・・・いや、参りました(笑)。

 彼女の願いが通じたのか、石井は見事レフトスタンドにライナーで突き刺さる、満塁ホームラン。 しかしこの瞬間、一塁側スタンドの観客が総立ちになったのはいいが、直後に割れんばかりの拍手が湧き起こったのはどうしてだろう(ヤクルトサイドなのに)?

 この後をリリーフの槇原が抑えて、巨人ファンには堪えられない試合内容および結果となった。 いやー、スタジアムってやっぱりいいですねえ。 またいきたいなあ、今度は女の子と(T-T)。

 さて、翌日会社でJ-WAVEを聴いてたら、海老原 由佳さん(J-WAVEの平日午前中のナヴィゲイター)が、石井選手のホームランのときにレフトスタンドにいたということを聞いて、びっくりした。

 もう四ヶ月以上平日午前中は彼女の声を聴いているが、彼女が野球を観にいったと聞いたのははじめてだ。 面白いもんだなあ。


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