イカサマなしだとすると、
チンチロリンでピンゾロが
出る確率は1/6×1/6×1/6で
216分の1になります。
それにしても、ピンゾロ
ってやっぱり綺麗ですね。



 ものすごくくだらないことを、考えてみたいと思います。

 東郷平八郎に 「百発百中の砲一門は、百発一中の砲百門にまさる」 という有名なことばがあります。

 論理的に考えれば、これが明らかな間違いであることは、 小学生でもわかります。 百発百中の砲一門が敵の大砲をひとつ沈黙させる間に、 百発一中の砲百門から発射された百個の砲弾のうちのひとつが、 彼を破壊してしまうだろうからです。

 ここで“期待値”というものについて、 書いておかなければなりません。 サイコロを振ったとき、一の目が出る確率は常に六分の一です。

 サイコロを一度振ったときに一が出る確率は六分の一。 二度振ってどちらか片方だけでも出る確率は六分の一プラス六分の一ですから、 三分の一となります。 以下、三回振れば二分の一、四回振れば三分の二、五回振れば六分の五。

 つまり、サイコロを六回振れば、そのうち一度は一の目が出る筈です。 また、六個のサイコロを同時に振れば、そのうちのひとつは一の目を出す筈です。 これを“期待値”といいます。

 先ほど“百発一中の砲百門から発射された百個の砲弾のうちのひとつが、 彼を破壊してしまうだろう”と書きましたが、 実はこれも期待値に過ぎません。

 実際にやってみればひとつも当たらないかもしれませんし、 逆にたまたま百発すべてが命中してしまうかもしれない。 しかしこれは、一般的に運とか偶然とかといわれているものです。

 現実にサイコロを六回振って一度も一が出なくても、 六十回、六百回、六千回と振る数が多くなればなるほど、 一の目が出る率は六分の一に限りなく近くなってゆきます。

 さて、ここで、 百発百中の砲一門をもつA軍とx発一中の砲百門を擁するB軍とが砲撃戦をやった場合の結果を、 純粋に数学的見地 (双方ともに充分の弾薬をもち、 さらに発射の間隔が完全に同一であると仮定した場合) に立って、考えてみましょう。

 この場合、一回の砲撃ごとにBはAにより一門ずつの大砲を失ってゆくことになりますから、 B側の砲の命中率は、

一回目・・・100/x
二回目・・・100/x+(100-1)/x
三回目・・・100/x+(100-1)/x+(100-2)/x
       ・
       ・
       ・

 となります。

 さて、百歩どころか九百歩譲って、 B側の砲の命中精度が千発一中だとしてみましょう。 これでさえ、十一回めの砲撃で命中率が1,045/1,000、 すなわち1を超えますから、 Bは最低89門の大砲を残してAを撃破することができる(だろう)というわけです。

 さらに、ものすごく精度が悪くて五千発一中としてみても、 91回めの砲撃で5,005/5,000となります。 Bは最低9門の大砲を残してAに勝てる(だろう)わけです。

 まあ、ここで種明かし (というほどでもありませんが) をしてしまいますと、 B側は一回の砲撃ごとに一門の砲を失ってゆくわけですから、 合計百回の砲撃を行うことができます。

 1から100までの数の総計は5,050ですから、 この百回の砲撃でB側が発射できる砲弾の総数は5,050になります。 ですから、最終的なB側の命中率は、 5,050/x(xはB側の砲の命中精度)となるわけです。

 つまり、B側の砲が五千五十発一中となったときにはじめて、 AはBと互角の立場で闘うことができる筈なのですが・・・。

 しかしAがすべての砲弾を100%確実に命中させていかなければならないのに対し、 Bは5,049発の砲弾のうち、どれかがまぐれで当たればそれで勝ってしまうのです。 これではとても、対等とはいえないでしょう。

 だいたい5,050発の砲弾をことごとく外すなんて、 これは当てるよりもよっぽど難しいのではないでしょうか。 こんな劣悪な砲兵隊をもつ軍隊(をもつ国家)は、 かなりの馬鹿が指揮しているのでないかぎり、 砲兵戦をしようとはしないでしょう。

 まあ結局、東郷元帥は 「戦争とはそういう心構えで遂行してゆくものである」 といいたかったんだと思うんですね。 日露戦争から太平洋戦争の終結までの日本の不幸は、 そんな単純なレトリックさえも理解できない連中が、 国家の舵をとっていたことにあると思うのです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

追記:

Ikuraさんより、

>> サイコロを一度振ったときに一が出る確率は六分の一。
>> 二度振ってどちらか片方だけでも出る確率は六分の一プラス
>> 六分の一ですから、三分の一となります。
>
> とあるんですが、
>
> 「2度振ってどちらか片方だけでも1が出る確率」
> =1−「2度振ってどちらも1が出ない確率」
> =1−「6分の5」×「6分の5」
> =1−25/36
> =11/36
>
> だと思うんですが、いかがなもんでしょう?

とのご意見をいただきました(Ikuraさん、どうもありがとうございます)。

ええと、これはたしかに、理論上はその通りです。文中、「サイコロを六回振れば、そのうち一度は一の目が出る筈です。また、六個のサイコロを同時に振れば、そのうちのひとつは一の目を出す筈です。」と書いていますが、理論的にはまったく一の目が出ない確率は、

5/6×5/6×5/6×5/6×5/6×5/6=15,625/46,656

となります。約三分の一、結構多いですね。

ただし、「確率・統計」を勉強したのは高校三年のときなのでよくは憶えていないのですが、「期待値」という考えかたからすると、「二度振ってどちらか片方だけでも一が出る確率」は、

1/6+1/6=2/6=1/3

でよかった筈だと思います。そもそも「理論的」に考えるとすると、あたり前のはなしですが、“百発百中の砲”自体が存在しないことになりますから。


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説明の必要はないかもしれませんが、日露戦争の日本海海戦で、連合艦隊を率いてロシアのバルチック艦隊に対して“完璧”といっていい勝利を収めたひとです。 当時海軍大将、のちに元帥。