新宿(靄々)篇


その日、僕は大学時代のサークルの先輩、同級生ふたりと四谷で飲んでいた。先輩と同級生のうちひとりは酒がほとんど飲めないので、はなしは盛り上がったものの飲酒のペースはほとんど上がらない。

はじまったのが17時ということもあり、終わったのは19時(二時間飲み放題のコース)。新宿のホテルに帰り着いたのは20時ちょっと前だったが、駅からかなり歩いたけど酔いは全然廻っていない。よし、いい感じ。

というわけで、まずシャワーで汗を流し、パソコンの電源を入れ、「お気に入り」に入れていたデリヴァリィヘルスLのウェブサイトに飛び、「本日出勤中」の女の子をチェックし、携帯で電話をかける。

「はいもしもしぃ」
「あ、Lさんですか?」
「はいそうですよ」
「デリヴァリィお願いしたいんですけど」

まず、泊まっているホテルの名前と部屋番号、そして宿泊名義(本名だけど)を伝え、電話を切る。間を置いて部屋の電話が鳴り、フロントが「山田様よりお電話ですが、お繋ぎになりますか?」と訊くので、繋いでもらう。

さっきチェックした女の子、5人の名前を挙げる。「では、ちょっとお待ちになってください」と再度電話を切り、今度は5分くらいで携帯電話が鳴る。

「いちばん早くご案内できるのでYちゃんにしました」
「わかりました、どれくらいかかります?」
「40分くらいですね。では」
「あ、ちょっと待ってください、コース」

当たり前のはなしだが、Lは時間とオプションによって料金が違う。というか、オプションを使うつもりはないんだけど、先に時間を確認しなきゃあとのスケジュールがつかないだろ。大丈夫か?

100分のコースにして電話を切り、もち込んだウイスキィでオンザロックを飲みながら待つ。ほとんど正確に40分後、部屋のチャイムが鳴った。ガタイのいいにいちゃんが立ってて、「Lです」という。僕はドアチェインを解除した。

「えーと、コースは?」
「100分って伝えといたと思いますが」
「ああ、すいません、22,000円になります」

用意していたお金を渡すと、にいちゃんは「では、ごゆっくり」と立ち去り、代わりに女の子が「こんばんはぁ」と入ってきた。「わ、かわいい」と思わず口にすると、Yちゃんは「ありがと」とにっこり微笑った。

さて。ベッドに並んで腰掛ける。「なんか飲む?」と冷蔵庫のなかを見せると、Yちゃんはヴォルビックを選んだ。再度ベッドに並んで腰掛けて、僕はオンザロックを、Yちゃんはヴォルビックを飲みがら、はなしをする。

Yちゃんはノリのいい女の子で、ちゃんとはなしに相槌を打ってくれるし、自分の意見もいってくれる。そんなわけで初対面の緊張はだんだん崩れてきた。そして、股間がいい感じになってきた。・・・は、いいのだが。

あれ? 気付いてみるとなんかえらく時間経ってない? テーブルの上のパソコンの時刻表示を見ると、もう一時間以上が経過している計算になる。

「あの、そろそろえっちなことをしたいんですが」
「あ、じゃあ、シャワーいこうか」

僕はYちゃんが服を脱ぐのを見守った。Yちゃんは小柄で顔もかわいいのだが、いかんせんお腹周りにけっこう脂肪がついていた。もっとも一時間以上も会話をしてリラックスし、しかも酔っている状態だから、あまり気にならない。

バスルームに入り、Yちゃんにからだを洗ってもらう。ジョニィを綺麗にしてもらったら、早くも臨戦態勢になってしまった。「じゃ、先に部屋に戻っててね」といわれ、タオルでからだを拭きつつベッドに戻る。

そして。Yちゃんが自分のからだを綺麗にしているとき、Yちゃんの携帯電話が鳴ったのだった。はぁ。溜息をつきながら僕はYちゃんの携帯電話をもってバスルームのドアをノックした。Yちゃんに携帯電話を手渡す。

Yちゃんがバスルームから出てきた。からだを拭きながら、「なんか、もう、迎えにきてるんだって。ふつうそういうの、事前に通知しなきゃ駄目だよね」。じゃ、駄目だ。Yちゃんに服を着るようにいった。

服を着終わったYちゃんに「最後にキスだけさせてくれる?」と訊くと「いいよ」といってくれたので、僕はYちゃんにキスした。僕はキスが好きなので、最後になんだかものすごく報われた気持ちになった。

が。長時間はなしをしてリラックスし、バスルームでYちゃんの手でジョニィを洗ってもらい、しかも臨戦態勢にまでなったのに、結果的には肩透かしを喰らったわけで。あとにはものすごく靄々した気持ちが残った。


ご意見・ご感想はこちらへ
















































前回2010年12月11日に利用しています。複数の風俗情報サイトを“歌舞伎町”、“デリヘル”でチェックすれば頭文字でわかると思います。













































いちおうLは“延長”はできるのですが、できなかった場合ショックが大きいのと、この場合は完全に自分の責任(時間の経過を忘れて喋りまくってしまった)なので、延長はしませんでした。