池袋(傷心)篇



 前回からこれほど間隔が空いてしまったのは、やはりその間に『ときめきメモリアル』と『トゥルー・ラブ・ストーリー』、つまり二次元のキャラにハマってしまったからなのかなあ、と思う。

 ゲームのなかの女の子は、ひどく楽な存在だ。もちろん設定によって傷つけられたり、逆に傷つけてしまったりすることもある。でも現実に誰かを傷つけるよりはマシだ。そして攻略本のとおりに会話し、行動すれば、ちゃんとらぶらぶになれてしまう。

 現実の女の子は、そうはゆかない。攻略本なんて売ってないし、そうするつもりはないのに傷つけてしまえば、こっちも傷つく。いや、だからこそ、現実の恋って楽しいんだけど。

 なんかひどくひさしぶりに、現実の女の子とえっちしたい気分になった。“Y-倶楽部”にいってみることにした。移転してしまったことは知っていたので、電話で場所を教えてもらい、店に入ったのは午後七時半くらいだった。

 80分AFコースを選択して、テーブルに並べられた7枚の写真のなかから、僕はEちゃんという子を選んだ。Eちゃんが7人のなかでいちばん好みの(ロリータ系の)顔だちで、しかも18歳といちばん若かったからだ。

 時間がきて、会員番号を呼ばれる。引っ越してからは受付とプレイルームを別々の建物にしたようで、
「○○○マンションの○○○号室にいってください」
 とニイちゃんに、これは前回通りコースや相手の女の子の名前を書き込んだ紙切れを渡された。

 チャイムを鳴らすと、ドアが内側から開いた。
「こんばんは」
 と笑いかけてきたEちゃんは、実物もやっぱりかわいかった。個室に案内される。移転してもスペースはゆったりとられていて、ちょっと嬉しかった。とりあえずシャワーに向かう。

 ひさしぶりにこういう店にきて、しかも年齢がひと廻り違うという意識があったからか、僕は自分でもわかるくらい緊張していた。Eちゃんのはだかを目の前にしても、Eちゃんがちょっとぎこちない手つきで洗っても、息子は萎縮したままだった。

 部屋に戻って、とりあえずはなしをすることにした。最初Eちゃんはちょっとおとなしげで、内気な子なのかなと思ったくらいだったが、話題を変えてゆくうちに鉱脈につきあたったようで、次第に自分からも喋るようになった。・・・ところが。

「そういえば大学の頃、自動車教習所で高校の同級生の女の子に偶然会ってさ。高校の頃はぜんぜん喋ったこともなかったのに、いきなり身の上相談されたことあるなあ」
「どんなことですか?」
「『彼氏は本当に自分のこと好きなのか』って」
「あ、よくありますよねそういうの。なんでそう思ったって?」
「なんか彼氏がさ、彼女の前で平気でおならするんだって」

「えー、そんなのふつうじゃないですかあ。私の彼もしますよお、しかも音つきで」

 気が動転しているという状態は、まさにこのときの僕のことだと思う。
「か、彼氏がいるのに、こんなとこで働いてちゃいけないよ」
 と、思わず完璧に“らしくない”セリフが口をついてしまった。

 いや、もちろんふーぞく嬢に彼氏がいたって、ぜんぜん変じゃない。でも、他のひとはどうなのかわからないけど、僕はいつも、相手の女の子のことを、短い時間の間だけでも、好きになりたいと思っている。つまり、疑似恋愛を求めているのだ。

 そういう志向をもつ人間にとって、女の子の口から彼氏のことなんて聞いてしまったら、気持ちが萎えてしまうのはこれはもう当然のことではないだろうか。

 まあ、そんなことはどうでもいい。Eちゃんは反論した。どうして彼氏がいたら、ふーぞくの仕事をしてはいけないのか、と。まあ彼女の立場からすれば、当然だろう。

 僕にとって問題なのは、Eちゃんに彼氏がいることではなく、その存在を知ってしまった事実だ。僕は彼氏のいる女の子と恋愛をする性格ではない。疑似恋愛にしたって、それは同じだ。だが、それをEちゃんに説明するのはひどく難しいように思えた。

 だから僕はその反論を適当に誤魔化したあと、無理をした。とにかくEちゃんのツボにはまったことを喋りまくって、その話題から遠ざかるようにした。その結果Eちゃんに、
「お客さんって、よく他のひとから面白いひとだって、いわれません?」

 といってもらえたくらいなのだが、それは別の効果をもたらした。せっかく80分コースを選んだというのに、会話だけで40分が経過してしまっていたのだ。

 とにかくはじめましょうということで、僕はマットレスのうえに仰向けになった。Eちゃんの愛撫はいきなり乳首からはじまった。おや指の腹でくりくりして硬くしたあと、おや指とひとさし指でつまむ。それから舌で乳首を転がす。

 Eちゃんの舌は脇腹へ動いた。Eちゃんの愛撫は広い範囲を一気につーっ、と舐める。そしてどちらかの脇腹を舐めるときに、同時におっぱいをちょっと押しつけるような感じにして、乳首でもう片方の脇腹を擦ってゆく。これがえらく気持ちいい。

 というのも、これは左右ともに五回繰り返されたが、だんだんEちゃんの乳首が尖って硬くなってゆくのが、それで擦られる脇腹で感じられたからだ。そして、脇腹を舐めているときのEちゃんの表情がまた、とてもよかった。すごく一所懸命という感じで。

 脇腹に続いて太股を舐めたあと、Eちゃんが訊いてきた。
「アナル舐め、します?」
 もちろんです。お願いします。

 僕は“ちんぐり返し”の体勢にさせられた。あったかい舌が、ちろちろとアヌスを攻める。僕は脇腹を舐めているときのEちゃんの表情を思い出した。いま彼女はあの表情で、僕の肛門を舐めているんだろうか。そう考えると、快楽が倍増した。

 そういうわけで、Eちゃんの舌がそこから離れ、彼女の手が僕のものにはじめて触れたときには、もうそれは硬度100%になっていて、先端からがまん汁が溢れていた。

 しかもEちゃんはかなり執拗にがまん汁を拭う。まあフェラは生なんだから用心はしておくにこしたことはないが、そのために根本をぎゅっと握って先端まで押し出す、という行為を三回も繰り返した。そのせいでさらに硬度は上がり、Eちゃんの舌がやっと息子に触れたときには、エネルギー充填110%くらいになってしまっていた。

 Eちゃんの舌はここでも、つつーっと広い範囲を移動した。うわー、と思う。なにせすでに110%だ。これで口のなかに包まれたら・・・。予想は当たった。Eちゃんのあたたかい口が息子を含んでゆっくりと上下運動をはじめると、確実にカウンタが上がってゆく。

 そのときその気になっていれば、僕はEちゃんの口のなかで爆発していただろうと思う。しかも生で。必死で我慢した。ここで出してしまえば、Eちゃんとお尻ですることはまず不可能だと思ったからだ。

 Eちゃんの口の上下運動は、わりあい短時間で終わった。ふーっなんとか耐えられたぜ、と大きく息をついた僕に、Eちゃんがいった。
「それじゃ、そろそろ入れますか?」

 あ、そうですね。じゃあ、とからだを起こしかけたとき、なにかが違うという気がした。なにが? 気付いて一瞬、呆然とした。

 俺はまだ、Eちゃんと一度もキスをしていない!

 なん度も書いてきたが、僕はキスが好きだ。なのにそのキスをしていない。いやキスをしていないのはいい(いいこともないが)。問題は僕がそのとき、かなり以前に読んだあるソープ嬢のインタビュー記事を思い出したことだ。

「お客さんに本番はさせるけど、キスは絶対させない。キスだけは、本当に好きなひととするの」

 そしてそれは当然、Eちゃんには彼氏がいるという事実に結びついた。そうだ、Eちゃんには彼氏がいるんだ。客にお尻は売っても、キスだけは彼氏と、ほんとうに好きなひととするんだろうか。そんな想いがアタマを駆け巡り、その瞬間息子の硬度は95%に落ちてしまった。

 しかし、まあ、ここまできて入れないというわけにもゆかない。Eちゃんが僕の息子と自分のお尻にローションを塗りたくっている間、僕はもうひとつ足りないものがあるような気がして、それがなんなのか考えていた。

 準備が整い、正常位でしてといわれたのでEちゃんの脚を抱えた瞬間、僕は足りなかったものに気付いた。僕はそのときはじめてEちゃんの性器を見たのだった。Eちゃんは69もさせてくれなかったし、まあ時間のせいもあるだろうけど、僕に主導権を渡してもくれなかった。

 だが、それは当然だった。はじめて見たEちゃんのそこからは、白い紐が伸びていたのだ。本当にEちゃんがおんなのこの日だったのか、それとも客にそう思わせるためにそうしていたのかはわからない。でも、僕は後者にとった。

<そうか、性器も売り物じゃないんだな。彼氏専用なんだ>

 そう考えた瞬間、さらに硬度が90%に落ちた。しかもそこで止まらず、緩やかにだが徐々に下降してゆく。これはやばい。AFにはまず、硬度が必要不可欠だ。僕は慌てて先端をEちゃんのお尻に当てがったが、
「いたあい・・・。もっと、ゆっくり入れてください・・・」

 ごめん焦っちゃったホントにごめんねでもゆっくりやってたら硬度が下がってく一方でそしたら入れることさえできなくなっちゃうかもしれないわけで・・・。

 挿入するだけで、5分はかかった。それでもいま思えば、挿入できたこと自体奇跡に近い。そのときの硬度は80%くらいだったからだ。僕はゆっくりと動きはじめた。Eちゃんのなかの感触は、ともかく硬度を90%まで押し上げた。

「ねえ、おっぱい触ったり舐めたりしていい?」
 キスしていい? とは、怖くて訊けなかった。いいですよ、とEちゃんが答えたので、僕は腰を動かしながら両手でおっぱいをまさぐったり、ちょっと体位を変えて乳首を舐めたり軽く噛んだりした。

 しかし、ぜんぜん気持ちよくない。そのとき僕は、すでにメンタルな部分で破壊されていた。ときおり口に含むEちゃんの固くしこった乳首と上気した顔が、彼女が自分でも感じはじめていることを教えてくれる。でも、アタマは醒めてる。Eちゃんの彼氏について、考えている。

 ひとしきり腰を動かしたが、駄目だと思った。90%から上に、どうしてもいってくれない。
「ねえ、ちょっと、休ませて」
 僕はEちゃんから自分を抜いた。

 タイマーを確認したEちゃんがいった。
「あと2分しかないです」
 じゃあもう無理だ、少なくとも今日は。あと2分、はなしをしよう。

 自分がどれくらいの間抽送運動をしていたのかと訊くと、12分だといわれた。
「12分じゃ無理だよ。俺前に20分かけてイケなかったことあるもん」
「でもお、」
 Eちゃんは不満そうにいう。
「私がお相手したお客さんって、いつもだいたい8分くらいでイっちゃいますよ」

「じゃあさ、もしかして、いままでEちゃんでイケなかったお客さんっていないの?」
「いません(きっぱり)。一度酔っぱらったひとで、どうしても硬くならなくて、入れることもできなかったっていうの、ありますけど・・・。ちゃんと入れられて、それでもイケなかったひとは」

 タイマーが鳴って、僕らはシャワー室に向かった。シャワーを浴びながら、Eちゃんがいった。
「お客さん。今日、ちゃんとイケるって思って、ここにきたんですか?」
 そのことばで、僕は自分がEちゃんのプライドを傷つけてしまったことを知った。Eちゃんのお尻でイケなかったという、ただそれだけで。

「もちろん。でも、そういうこともあるんだよ」
 僕はとりあえず、そう答えた。だけど、その理由を説明したところで、なんになるだろう。僕はもう、それ以上Eちゃんを傷つけたくなかった。

 Eちゃんに見送られて、僕はマンションの廊下に出た。ひどく悲しい気分だった。


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『NIGHT GALS』に、このお店の情報が掲載されています。知りたいかたはここをクリックしてみてください。システムなどはちゃんとこの通りでした。女の子の紹介もされているのですが、実際在籍している女の子は倍くらいいると思います。













































ただし、はなしが年齢のことになったとき、Eちゃんは「ホントは19歳なんですよ」といって笑った。でもEちゃんは顔だちが本当に幼かったので、16歳といわれても通りそうだった。16歳じゃ働けないけど。













































それならイメクラの“恋人コース”にでもいけ、とかいわれてしまいそうだが、そういうのは嫌だ。僕は初対面から、自分なりのコミュニケイションを重ねることによって、嘘でもいいから彼女を知りたいと思う。そして、嘘でもいいから、自分を好きになってほしいと思う。

おそらく、ふーぞくに対する僕のこのエクセントリックな考えかたは、隆慶一郎さんの『吉原御免状』をはじめとする作品群に描かれている初期の吉原に、強く感銘を受けたからだろう。













































なにせ行為をはじめるとき、「お客さんとこんな長い時間はなしたの、はじめてですよ」とEちゃんにいわれたくらいだ。そりゃそうだ。40分コースならそれだけで終わっている(T-T)。