中野(落胆)篇



年末の“えっち納め”で失敗して精神的欲求不満が増大した僕は、リターンマッチに向かうことにした。 “えっち始め”だ!  しかし正月三が日にってのもなあ・・・。 と、とりあえず四日(正月休み最終日)に目標を定める。

 さて、正月休みの間はずっと『提督の決断』をやっていたので、四日は目覚めたときから臨戦態勢だった(そういう経験、ありません?)。 しかし陽の高いうちからゆくのは恥ずかしいので、とりあえずパチンコでもして時間を潰すか、と午後一時頃近所のパチンコ屋に入る。 これが失敗だった。

 デジパチが三千円とけっこう早めに当たった(無制限)ので、 「こりゃいいや、一万円勝ったら“平成”、二万円なら“お元気ハウス”、三万円勝ったら“尻キチ隊”だ!」  とか思ってたら、出た分ぜんぶ飲まれてしまった。

 ここでアツくなってしまうのが、僕の悪い癖。 次の大当たりをひいたのはさらに九千円をつぎ込み、午後五時を廻ったときだった。 つまり、銀行で金をおろせる時間を過ぎてしまっていた。 銀行で軍資金を確保してから、渋谷なり池袋にいくつもりだったのに・・・。

 財布のなか身を確認してみた。 ・・・足りない。 これではどこへもゆけない! どうあがいても、いまこの持ち玉を増やさない限り、“えっち始め”は行えない。 僕は自分に気合いを入れた。

 で、どうなったかというと、午後10時の閉店まで粘って一万二千円勝った。 勝ったとはいえ長時間の勝負で腰が痛いわ、腹は減ってるわ、結局財布のなか身は二万円ちょっと。 この時点で、目標は“平成”と決まった。

 外は、小雪がぱらついていた。 風も強かった。 平成まで歩く間に、ゆき倒れになってしまうんじゃないかと本気で思った。

 10時半に“平成”に入る。 ヒータの風に、生き返った心地がした。 ロビィには三人も先客がいた。 これじゃ自分の番はいつになることやらと思ったが、全員指名待ちだったらしく、10分ほどで案内される。

「Sです。 よろしくね」
 黒いシースルーのドレスを着てお辞儀した女の子を見て、<おっ、なかなかかわいいじゃないか>と思った。 齢は・・・、二十代の後半だろう。 ひどく落ち着いた雰囲気のひとだった。

 個室に入って、服を脱ぐ。 湯加減をみていたSさんが、
「じゃ、こっちきてね」
 というので、浴槽のほうに向かう。 そして、Sさんのはだかを間近で見た瞬間僕は、

「なんじゃこりゃあ!!」

 と思った(かろうじて口から叫びが出るのを抑えた)。 ロビィで見たときは照明が暗くてよくわからなかったが、100Wの光の下で洗い場に座ったSさんは、みごとな三段腹だった。

 前にも書いたが、僕はロリコンだからスリムなほうが好きだ。 バスト70センチのスリムな女の子とウエスト70センチの豊満な女の子どっちを選ぶ、と訊かれたら迷わず前者を選ぶ。 しかし、Sさんのウエストは70センチなんか軽く超えていそうに思えた。

 ともかく、湯船につかる。 粉雪に叩かれて芯から冷えていたからだが、末梢神経の隅々まで「気持ちいいー」と叫ぶ。 もうSさんとえっちな行為なんかしないで、充分あったまったらそのまま帰って寝たい、と思った。

 しかしまあ、場所が場所なんだから、そういうわけにもゆかない。 あったまったところで湯船から出て、Sさんにからだを洗ってもらう。 息子はいちおう反応はするが、さすがに鈍い。

「今日はなにやってたんですか?」
「あ、パチンコを・・・」
「勝った?」
「勝ったから、ここにきたんですよ」

 からだを洗うのを終了して、再度湯船につかる。
「私さあ、前はパチンコやってたんだけど、月に四十万とか負けちゃってさ、それでやめたの。 パチンコはいいんだけど、パチスロってなんかつぎこんじゃうんだよねえ」
「・・・」

 ベッドに入る。
「指は、入れないでくださいね」
 そういってSさんは愛撫を開始する。 心配しなくても、手が動かない。 動かそうとすると、Sさんのお腹が眼に入る。 そうすると、まるで筋弛緩剤でも打たれたかのように、上半身に力が入らなくなる。 仕方ないから、目をつぶってされるままになっていた。

「じゃ、ゴム着けるからね」
 Sさんはわざわざそう断ってなんとか80%状態になった息子にゴムを被せてローションを塗りたくると、ものすごいスピードで手コキをはじめた。 さすがに刺激が強く、息子の硬度は増してゆく。

 とりあえずカタくしといて最後はお口かあ、とぼんやり考えたが、そうではなかった。 Sさんは息子の硬度が100%になっても、手の動きをやめない。 どころかますますはやくなってゆく。

 わ・・・、ちょっと・・・。 あっという間にエネルギー充填120%となり、波動砲は発射された。 その瞬間、僕の心になんともいえない悲しみが襲ったのは、いうまでもない。

手で出すんなら、ゴム着ける必要があんのか!?

 五十分の時間が半分近く余ったので、残りの時間、Sさんは肩や腰のマッサージをしてくれた。 実はこれがいちばん気持ちよかったのだが、下半身の精神的欲求不満状態のヴォルテイジが前にも増して上がったのは、いうまでもない。

 僕は、粉雪の舞う帰り道を、重い足取りで家路についた。


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